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2022/09/22

<アイデアソン特集>「何もないから何でもある」へ—今金町 “ゼロから始める観光振興”

北海道の南部、檜山地方に位置する今金(いまかね)町は、日本一の清流・後志利別川が育む豊かな農産品が自慢のまちです。今回のアイデアソンでは「今金町らしいサステナブルな観光リゾートづくり」に向けた方策について議論します。今金町役場でワーケーション業務を担当するまちづくり推進課の 加藤 剛広さん にテーマを設定した背景や狙い、アイデアソン実施に向けた熱い想いなどについて伺いました。

目次

● ブランド品「今金男しゃく」を生産、肥沃な農業地帯
● 観光客誘致への挑戦
● “今金町らしい” 観光リゾートとは何か

● これからの観光地づくりを一緒に考える “入口” に立つ

ブランド品「今金男しゃく」を生産、肥沃な農業地帯

はじめに今金町の特徴について教えてもらえますか。

加藤氏 : 北海道らしい田園風景が広がる今金町は、肥沃な土壌や豊かな自然の恩恵を受け、道南エリアで随一の「農業のまち」として知られています。中でも、町の名前が付いた「今金男しゃく」は品質、味ともに全国トップクラスで、国内の一部の市場にしか出荷されていない希少品です。2019年には、道内3例目の「GI認証(※)」を獲得しています。

※地理的表示保護制度:地域で育まれた特別な生産方法によって高い品質や評価を獲得している商品の名称を品質の基準と共に国に登録し、知的財産として保護するもの。

▲選果場で厳しい品質検査を行い、検査を通過したものだけが特産品「今金男しゃく」ブランドとして全国に流通

観光客誘致への挑戦

今回のテーマは「稼げる地域を目指す!ゼロから始める観光振興と官民連携のカタチ」ということで、 “観光” がキーワードです。行政にとって観光振興策に取り組む目的はどのような点にあるのでしょうか。

加藤氏 : 人口減少などを主要因として町の財政状況は年々悪化の一途を辿っています。そんな中で町内のピリカ地区と呼ばれるエリアを観光リゾート化し、関係・交流人口の増加を通じて経済効果を生み出そうとする方針が出てきました。

ピリカ地区には、手ぶらで体験できるキャンプサイトや天然温泉などの宿泊拠点も充実していますね。

加藤氏 : 2012年からは札幌国際大学と町内主要団体で協議会を組織し、観光コンテンツづくりを目的として官民学連携事業を開始しました。日本一の清流・後志利別川でのラフティングや砂金採りの体験プログラム造成、フットパスコースの作成などに取り組んできました。その中で近隣市町村との差別化要因(キラーコンテンツ)や、アイデアや企画の実行段階でマンパワーが不足するなど、解決すべき課題が山積しています。

▲クアプラザピリカでは、滞在中にキャンプサイトでの手ぶらキャンプも自由に楽しめる

“今金町らしい” 観光リゾートとは何か

マンパワーに依存しない仕組みづくりや、観光リゾート化に向けたロードマップ作りの必要性が出てきた訳ですね。

加藤氏 : そうです。アイデアソンでは、 “今金町らしいサステナブルな観光リゾートとは何か?” を検証いただくため、①地域資源を探すプログラム体験、②観光リゾート化を進めるロードマップ作成に向けた行政職員、地域事業者とのワークショップの2つを軸に議論します。ただし、稼げる観光地域とはいっても観光先進地のようなリゾート地を目指している訳でありませんし、町にも大きな投資ができる余力が現状はありません。 “サステナブル” という視点を期待しています。

——加藤さんを中心に視察プログラムを作成したと伺いました。どのような視点で作成されたか教えてもらえますか。

加藤氏 : 各プログラムの運営者から現状や課題など “生の声” を聞いていただき、一緒に解決に向けて議論していくことを狙いとしています。例えば、初日には複合ダム堤頂長日本一の「美利河ダム」を視察予定です。ただ “ダム地下” を見学して終わりでなく、国土交通省北海道開発局と私たちが二人三脚で取り組んできたストーリーも理解いただきたいです。一見すると観光地の視察に見えるかもしれませんが、こうした “熱量” を感じるために実際に現場まで足を運んでいただきたいと考えています。

▲ピリカダムには魚道も整備され、観察窓からは季節に応じた魚道内の魚の様子も自由に観察可能

「ピリカプロジェクト実行委員会(事務局:今金町役場まちづくり推進課)」のメンバーもワークショップに参加すると聞いています。どのような組織でしょうか。

加藤氏 : ピリカ地区の観光振興による地域経済活性化、交流・関係人口増加に向けた企画立案・実施を目的とし、観光協会や農協、観光関連施設の職員などを中心に設立しました。来年度から経済活性化に向けた新プロジェクトを始動予定ですので、アイデアソンで議論していただく内容は今後「今金町ピリカリゾートを造成する為のロードマップ(10年計画)」作成を進めるにあたり、ファーストステップとして活用させていただく予定です。

これからの観光地づくりを一緒に考える “入口” に立つ

——最後に、今金町でのアイデアソンに参加を検討されている方にぜひメッセージをお願いします。

加藤氏 : ピリカ地区を観光地化したいという思いで町が動き出したのは、今から30年以上前になります。これまでに色々な失敗を積み重ねてきましたが、それでもなお、地域の思いは変わりません。外部の視点で今金町を見つめていただき、地域の人々との議論の中で課題などを整理しながら、これから観光地域づくりを進めるにあたり、地域として歩むべきファーストステップについてご提案いただければと思います。また、アイデアソンを通じて私たちや町内企業との繋がりを構築していただき、今後とも双方にとって価値のある関係の構築を図っていければと期待しています。

地域課題解決アイデアソンin北海道 インタビュー連載

#1 帯広市 | 「十勝・帯広の優位性を活かした “ワーケーション” のあくなき追及」
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#3 今金町 | 「『何もないから何でもある』へ—今金町 “ゼロから始める観光振興”」
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#5 上川町 | 「観光リゾート地・上川町で実現したい “滞在型観光のカタチ”