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2022/09/22

<アイデアソン特集>富良野市 “ゼロカーボンシティ” への挑戦

北海道の北部、上川地方に位置する富良野(ふらの)市は、グルメやラベンダー、「北の国から」のロケ地など、豊富な観光資源で知られています。2021年には「ゼロカーボンシティ」宣言を表明しましたが、今回のアイデアソンではゼロカーボンシティ実現に向けて「市民一人ひとりの行動変容を促す仕組みづくり」と「企業向けの学びのプログラム造成による関係人口創出・拡大」に向けた方策について議論します。富良野市役所でワーケーション業務を担当する総務部企画振興課の 松野 健吾さん、環境関連業務を担当する市民生活部環境課の 石出 訓義さん にテーマを設定した背景や狙い、アイデアソン実施に向けた熱い想いなどについて伺いました。

目次

● 観光リゾートだけじゃない “環境リサイクル都市” としての顔
● 市民一人ひとりのゼロカーボンシティの挑戦
● “よそ者” 目線で省エネ・脱炭素に向けた可能性を探る

● “次の世代” につなげていくために共に考え、議論する

観光リゾートだけじゃない “環境リサイクル都市” としての顔

はじめに富良野市の特徴について教えてもらえますか。

松野氏 : 面積の約7割を山林が占めるなど、都会の喧騒を離れ、ゆったりとした時間を過ごすことができるまちです。自然や農村景観に加え、旬の食材を使ったグルメやラフティングなどのアウトドア、テレビドラマ「北の国から」のロケ地から派生した演劇文化のほか、日本屈指の規模を誇るスキー場など、多様な地域資源を活かした国内有数の観光リゾート地です。

石出氏 : 観光地としての印象が強いかもしれませんが、雄大な自然や環境に配慮した廃棄物・リサイクル対策を進めており、全国市区町村を対象とした地域ブランド調査では2年連続で「環境にやさしいまち」全国1位に選ばれるなど、環境リサイクル都市の側面もあります。90%という高いリサイクル率(資源化率)を誇り、2021年には「ゼロカーボンシティ」宣言を表明しました。

市民一人ひとりのゼロカーボンシティへの挑戦

今回のテーマは「『リサイクル率90%のまちからゼロカーボンシティへ』市民一人ひとりの挑戦」とあります。そのように設定した背景や狙いはどのような点にあるのでしょうか。

松野氏 : アイデアソンでは、「①市民一人ひとりの行動変容を促す仕組みづくり」と「②企業向けの学びのプログラム造成による関係人口創出・拡大に向けた方策」の2つの軸を念頭に置いています。

石出氏 : 富良野は森林に恵まれた盆地に立地し、雨が森林を育み、川が生まれ、川の水が食料生産の源になるという、人が生きるためのサイクルや空間が市民生活の身近にある地域です。これまで市民にはゴミの分別に協力してもらってきましたが、実際のところ「何のための分別?ゼロカーボンって何?」という素朴な疑問を持っている方や、今ひとつピンと来ていない方も少なくないと思っています。行政の立場からすると、市民の行動変容を促すために市民にゼロカーボンの取組をどう伝えるか、市民は何をしたらいいのか、市民が同じ方向に進むにはどうしたらいいのかなど、参加者にリサイクルの現場を見ていただきながら一緒に考えたいという意図があります。

松野氏 : 市内のNPO法人富良野自然塾が実施する「環境教育プログラム」を拡充することで、環境について学びたい人が訪れ、富良野ならではの学びに触れるという流れを作っていきたいと考えています。ゼロカーボンの考え方は環境を維持し次の世代に伝えることであり、世界中どこに住んでいても必要な考え方だと思います。観光客やビジネス客が市民のゼロカーボンの取組や、環境教育プログラムの受講などを通じて意識を変革し広めていってもらいたいというのが願いです。

▲NPO法人富良野自然塾では、ゴルフ場跡地のフィールドを森に還しながら、様々な環境教育プログラムを展開

“よそ者” 目線で省エネ・脱炭素に向けた可能性を探る

——先ほど伺った狙いを踏まえ、どのような視察プログラムを作成したか教えてください。

石出氏 : 富良野市ではゴミを14分別し、各処理施設で適切に処理しています。初日は市内廃棄物処理施設のうち、2か所を視察していただく予定です。山部地域のリサイクルセンターではゴミを固形燃料化して熱源として再利用しています。布部地域の環境衛生センターでは生ゴミをたい肥化し、肥料として循環させています。また、もう一つの視察先である白鳥川小水力発電施設は、小規模な川を使って発電をする実験的な施設であり、ドラマ「北の国から」で黒板一家が住んでいた麓郷(ろくごう)地区の小中学校や外灯の電源として使用されています。市内には小さな川がたくさん流れているため、今後こうした施設を拡げていきたいと考えています。

▲市内・白鳥川に企業・住民・行政が一体となって小型水車を設置し、自然エネルギーとして利用

初日は「行政と市民が二人三脚で実施してきたリサイクルの取組」と、ゼロカーボンの取組の中でも「再生エネルギーの利用」を視察するということですね。2日目以降はいかがでしょうか。

松野氏 : 2日目は午前に環境関連の座学の時間を設けています。今、お話ししているような、どういう理念でなぜゼロカーボンを目指すのか、環境教育プログラムの実施やワーケーション受入を通じて関係人口が拡がり、学ぶ機会が増えていくことの重要性について私たちから説明予定です。また、3日目の午前は富良野自然塾の「環境教育プログラム」を受講していただきます。今後内容を充実していきたいと考えているので、新たなプログラム造成のヒントなどを教えていただけたらと思っています。

地域のキーパーソンとの交流の場はあるのでしょうか。

松野氏 : 「ふらの市民環境会議」のメンバーとの交流を予定しています。環境問題に関心がある市民が登録し、先進事例視察やセミナー開催、環境展の開催などに取り組んでいます。メンバーは20~60代まで幅広く、一般市民に加え、富良野市職員も市民の一人として参加しています。10月9日(日)にふらの市民環境会議と市、北海道との共催による市民セミナー「2050年ゼロカーボン・シティに向けて」を開催予定(オンライン受講可)ですので、こちらもぜひ参加ください。

“次の世代” につなげていくために共に考え、議論する

——最後に、富良野市でのアイデアソンに参加を検討されている方にぜひメッセージをお願いします。

松野氏 : ゼロカーボンの意識を高めていくための市民の行動変容について一緒に考えてくださる方であれば、どなたでも歓迎します。自分たちのことだけではなく、次の世代につなげていくために必要なことは何かという問題意識を持って参加いただきたいですね。また、ゼロカーボンの意識を高めるための環境教育プログラムの充実も課題となっているため、こうした取組に関係する企業の方の参加もお待ちしています。

地域課題解決アイデアソンin北海道 インタビュー連載

#1 帯広市 | 「十勝・帯広の優位性を活かした “ワーケーション” のあくなき追及」
#2 富良野市 | 「富良野市 “ゼロカーボンシティ” への挑戦」
#3 今金町 | 「『何もないから何でもある』へ—今金町 “ゼロから始める観光振興”」
#4 長沼町 | 「新千歳空港からわずか30分・長沼町が目指す “シン・長沼ワーケーション”」
#5 上川町 | 「観光リゾート地・上川町で実現したい “滞在型観光のカタチ”